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此の年の12月、ヴァンクーバーに船を置き一時帰国した。古本屋でヨットへ持ち帰る本を物色中この本を見つける。捕虜となった一兵士の聞き取りをまとめた本である。

アッツ守備隊は米軍上陸時、すでに飢餓状態にあった。米軍の海上封鎖と悪天候で補給は潜水艦頼みで充分でなかった。

米軍の記録にもあたり彼我の状況も公平に記載している。日本軍の予想外の戦術と抵抗に取り乱す米兵、米兵戦死者から携行食糧を奪ったり、米軍の兵站拠点になだれ込み、その食料を漁り、米兵と戦う日本兵。

それぞれのプライドと、家族愛と、愛国心をかけ、人間くさい残酷な肉弾戦が、わずか半世紀前にこの島で行われた地獄が書かれている。

捕虜となり、尋問の過程で日本人通訳とのやり取りは、このあとカリフォルニアのモントレーでお会いした、日系二世米兵だったA氏の当時(南太平洋で日本兵の投降と尋問にあたっていた)の苦悩のお話と重なり、我々はまだこの歴史の中の登場人物と同じ時間を共有していることを深く肝にめいじた。

カナダでも「収容所から此の町へ帰ったのは私だけだった。」と語る日系老紳士とお会いした。謙虚さと優しさと、明治生まれの気骨ある人柄が、その町で日系人、カナダ人、カナダ・インディアンからも尊敬されていた。日本ではすでに此の様な方たちとは、なかなか会うこともない。